リスクエンジニアリング[1]とは、危険を特定し、損害や混乱を引き起こす可能性を最小限に抑えるプロセスです。
リスクが厳しい今の世界では、経験豊富なリスクエンジニア[2]からアドバイスやガイダンスを受けることの重要性が非常に高まっています。
保険会社は、食品・飲料部門において大規模な損失を出した経験から、食品・飲料企業の活動は危険性が高く、また特に冷蔵倉庫建屋などで可燃性パネルといった危険な材料を使用しているという認識を持っています。多くの場合、建築規制は最低限の基準のみを適用対象としており、建物ではなく人命を救うことに主眼を置いています。
物流拠点や流通倉庫は大規模化しており、自動保管・回収システムの使用頻度も高まっています。非常に資産や在庫密集していることも珍しくなく、高濃度アルコールなどかなり大量の危険物を長期間保管している場合があります。スプリンクラーシステムなどの防災システムはこのような大規模な施設を保護する設計となっていない可能性があるため、企業はそうしたリスクを抱えることになります。
こういった超大型倉庫のいずれかで火災が発生した場合、制御が困難になり、壊滅的な損失によりサプライチェーンが混乱するおそれもあります。多くの食品・飲料会社は「ジャストインタイム」生産に依存しているため、サプライチェーンがストップすると困難に陥るという脆弱性を抱えています。
リスクを軽減するためには、建屋の新規建設プロジェクトや既存施設とその保護システムの見直しの際に、できるだけ早い段階でリスクエンジニアに参加してもらうことが鍵となります。
以下に、リスクエンジニアはどのような面でお客様を支援できるかをご紹介します。
新しい建物や防災システムの設計と計画:リスクエンジニアは、お客様やそのコンサルタント、請負業者と連携して、設計、試運転、設置の各段階で新しい建物のプロジェクトおよび防災システムを見直し、良し悪しを判断することができます。リスクエンジニアに早い段階から参加してもらうと、国際基準を満たしつつ適切に建設や管理を実施できるようになります。
リスクに対する認識の見直し:リスクエンジニアに参加してもらい、業界におけるリスクとはどのようなものかを改めて見直しつつ、利用候補の保険会社に提示するリスクを実情に合ったものにすることにより、最高の価値を得られます。
リスクエンジニアリングプログラムの作成:リスクプロファイルの管理と改善に重点を置いた体系的なリスクエンジニアリング戦略があれば、お客様はリスク管理を適切に行いつつ損失を回避できるため、そうした損失に巻き込まれるリスクがないことを自信をもって保険会社に示すことができます。リスクエンジニアはお客様と協力して戦略を策定します。
独立したリスクレビューの実施:リスクエンジニアは、その時点および将来のサイト運用やリスク管理について独立した立場からレビューを行い、損失防止、リスク管理、保険会社からの推奨事項の実施に関するアドバイスやガイダンスを提供することができます。
また、障害の状況に関するレポートを提供し、工場、機械、構造物について見過ごしがちな変化を指摘することができます。
損失見積:リスクエンジニアが損失見積シナリオを計算します。この計算により、加入している補償が適切なレベルであるかどうか確認できます。
損失見積により防災システムへの支出がリスクや損失規模の軽減にどれほど貢献しているかがわかり、業務上の変更の参考にすることもできます。
事業中断調査:この調査により、リスクを評価し、損失のリスクを最小限に抑えた事業継続計画を作成できます。
食品・飲料業界は、製造方法の変化や保管・配送拠点の拡大に伴い、さまざまな課題やリスクに直面しています。
現場調査、新しい建物や防災システムの設計・計画段階にできるだけ早い段階からリスクエンジニアに参加してもらうことで、そのノウハウを活用してリスクを軽減し、保険会社により良く自社のリスクを理解してもらうことができます。